空間跳躍の技術も正しく伝え終わり暇を持て余し始めたある日。
『渡したいモノがあるから今日の夜に、指定された場所まで来てくれ』
お姉ちゃんにそんな事を言われてメモを渡された12日の朝食時。
メモを私に渡したらそそくさと何処かに行ってしまったので詳しい事は聞けなかったけど――
「あれからずいぶん経ってるはずなのに、私の誕生日覚えていてくれたんだ……」
そう、今日6月12日は1200年振りの私――シンシア・マルグリットの誕生日なのだ。
◆ ◆ ◆
期待に胸を膨らませた1日が過ぎ、指定されていた時間が近づいてくる。
「日も暮れてきたし、そろそろ行ってもいいよね。えっと……メモメモ」
朝渡されたメモを開く。
「うーん、この場所って研究所のある所よね」
メモには研究所のある地区が指定されていた。
なんでわざわざそんな所なんだろう?
私の誕生日会とかするなら家でもいいのに。
サプライズパーティ?
でもメモを寄越してる時点でバレバレだよね、違うか。
……もしかして私の誕生日パーティーって事自体が勘違いだったりして。
「……まあ考えても仕方ないか」
とりあえずお姉ちゃんが待っているところに行こう。
そうすれば疑問は全部解決するはず。
「よし、行こっ!」
◆ ◆ ◆
研究所の中にはあらかじめ伝えておいてくれたらしく、中にはすんなりと入る事が出来た。
お姉ちゃんが待っている研究室へと歩いていく。
「……それにしてもずいぶんと奥の部屋なのね」
メモに記された場所は私も行った事がない場所だ。
「普段は何の研究をしてるところなのかしら?」
廊下をメモを見ながらしばらく歩いていると、
「あ、お姉ちゃん」
目的の部屋の前にお姉ちゃんが立っていた。
「よく来たな、待っていたぞシア」
「外で待っててくれたの? 部屋の中で待っていてくれても迷わなかったのに」
「まあいいじゃないか、そんな事は」
「それで今日ここに呼ばれたのは――」
「ん? ああ、そういえばまだ言っていなかったな。
……誕生日おめでとうシア、今日が来る日を楽しみにしていたよ」
「ありがとう、お姉ちゃん。覚えていてくれたのね」
「当たり前だろう。大事な妹の誕生日なのだからな」
「うん……!」
「ふふふ……さあ立ち話はそろそろ終わりにして、部屋の中に入るといい」
「うん、お姉ちゃん」
お姉ちゃんに促され部屋の中に入ると、そこにはプレゼントボックスが何個か置いてあった。
「これって全部私へのプレゼントなの?」
「そうだ。全部シア宛てのプレゼントだよ」
えっと、1、2、3……6個か。
今まで離れていた分……じゃないわよね、だとしたら1000個超えちゃうし。
なんで6個なんだろう?
「考えてないで開けてみたらどうだ」
「あ、うん」
いけないいけない、危うくいつもみたいに思考に没頭するところだったわ。
「えーっと、どれから開けようかな。うーん……」
「あまり悩まないで直感で決めてみたらどうだ?」
「直感? そうねぇ……じゃあこれで」
なんとなく手近にあった箱を1つ手に取った。
「改めて、ありがとうお姉ちゃん。開けさせてもらうね」
「本来ならその言葉は私が受け取るべきではないのだがな……。
それにしてもそれから選ぶとはな、ふふ」
「ん? 何か言った」
「いや、大したことじゃない」
「そう……?」
何か小さい声で呟いていたような気がしたんだけど。
「それよりほら開けてみないのか?」
「う、うん」
なんだか誤魔化された気がするんだけど。
とりあえずプレゼントの包みを広げてみる。
「これって写真立て? この時代にしてはずいぶんとアンティークな……あれ?」
なんだろう、包みの中には写真立て以外にも封筒が入っていた。
「これも開けていいの?」
「包みの中に入っていたならそれもプレゼントなのだろう。
それにさっき言ったがそこにあるものはシア、全部お前に宛てられた物だからな」
「う、うん」
お姉ちゃんの言いまわしに少しの疑問を覚えながら封筒の封を開けて中身を取り出してみる。
「写真……?」
「……」
「あ……。お姉ちゃん、これって……」
声が震える。
「そうだ、シアの思っている通りのものだ」
「じゃ、じゃあここにあるもの、もしかして全部――」
「ああ。タツヤたち朝霧家と鷹見沢家……あの時お前が世話になった人たちからのプレゼントだ」
◆ 後編に続く ◆
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